本作は『カイゼン・ジャーニー』の続編。途中入社ながらいきなり開発チームのリーダーに抜擢されてしまった主人公の太秦が、まだチームになれていないグループ状態のメンバーたちを、アドバイスをもらいつつ四苦八苦しながら「1人の人間のようなチーム」へまとめ上げていく。最終的には複数のチームにまたがったマネジメントを行うまでに至るわけだが、その過程を読者が追体験できるよう小説仕立てになっている。
太秦たちのチームはプロダクト開発でスクラムに取り組むようになるわけだけど、成長するのはプロダクトだけじゃない。チームも成長が必要。チームの成長を計画するには、スクラムのスプリントでは短い。そこでスクラムの型に捉われず、数スプリントをまとめた「ジャーニー」という考え方を導入したのが、本作の一番の功績だと思う。そして、ジャーニーによっては新しい役割を追加したり、人に割り当てる役割を変えたりといった、フォーメーションを柔軟に変更していくやり方は新しい観点だった。
小説仕立てになっているので、問題が発生している状況を想像しやすい。その一方で、解決編での、実際に解決していってる過程の描写が足りてない気がする。解決編と言いながら、真の解決は次の章に持ち越しも何回かあるし。あと、太秦は第一部と第二部で、別人と思うくらいの成長っぷりだった。
カイゼン・ジャーニーの続編なだけあって、蔵屋敷や西方、ウラットといったお馴染み(?)の面々が登場してきて、読んでいてフフッとなる。もちろん前作の主人公江島も。その江島がまさかの役職になっていて、いやぁ、出世したなぁ。もちろん、前作を読んでいなくても読み進めることができるようになっているので問題ない。読んでいればより楽しめる、という感じ。